開催場所:公共の宿 くじゃく荘
日時:令和8年5月23日(土)、24日(日)
内容:LD道場例会「事業継承とM&A中小企業が「今」考えるべきこと」
講演:早野 正将氏
担当委員会:啓発啓蒙委員会

開式宣言は本田寿一副委員長、綱領唱和は江頭委員長。

平倉会長による会長挨拶。

各委員長による委員会報告。
啓発啓蒙委員会 立石委員長
市政を推進する委員会 戸畑会員(委員長代理)
教学イノベーション委員会 本田寿一副委員長
45周年事業実行委員会 江頭委員長

直江会員による進行でLD道場スタート。
5月LD道場例会は、5月23日(土)・24日(日)に公共の宿 くじゃく荘にて、講師の早野 正将氏をお招きし『事業継承とM&A中小企業が「今」考えるべきこと』について、講演をしていただきました。
講演では、国内中小企業約336万社のうち約61%で後継者が未定という現状を踏まえ、事業承継の方法として親族内承継、内部昇格、M&A、廃業の4類型について解説が行われ、近年、M&Aは特別な選択肢ではなく一般的な事業承継手段となっている一方で、必ずしも成功事例ばかりではなく、実際には半数以上の案件で何らかの課題や問題を抱えているとの説明があり、特に、事前のコミュニケーション不足は社員に不信感やしこりを残す要因となるため、譲渡側・譲受側だけでなく、社員や取引先を含めた信頼関係の構築が極めて重要であると強調されました。
さらに、M&Aの成否を分ける要素として、クロージング後のPMI(経営統合)の重要性が挙げられ、従業員との良好な関係づくりが不可欠であるとの示唆を得て、加えて、企業価値評価の手法(時価純資産法、DCF法、類似企業比較法)や、ノンネームシートなどの準備資料、クローズド・オープンアプローチによる相手先選定方法についても学びました。
また、自社価値向上のためには「見える化」「事業」「組織」の3つの磨き上げが重要であり、強みの可視化、業務の仕組み化、属人化の排除が必要であると理解しました。なお、M&A仲介業者からの営業メールやダイレクトメールには注意が必要であり、「業務提携したい企業がある」といった表現が営業目的の場合も多いため、安易に受け止めず慎重に判断することの重要性についても説明がありました。

講師の早野 正将氏。

事業継承とM&Aの説明。
■ 各社の状況 ■
直江氏:社内継承を考えている。安心して継承できる後継者の育成。スキル、能力は身についているが、経験者としての経験が不足。経営計画書作成等で補完中。候補はいるが安心して任せるまではいかない。ミスの責任を負う覚悟。会社への「想い」を紡いでくれる後継者が欲しい。
森下氏:身内・社内継承は困難と判断、同業他社への引継ぎを検討。
本田寿一氏:身内継承を希望するも時間を要する見込み。社員に候補1人。経営者としての経験が不足している。
平倉氏:M&A完了。経営と資本の分離を進め、社内から次期経営者を生み出す人事制度を整備中。
豊島氏:個人事業のため自身は廃業予定、関与企業の経営課題に注力。
本田福盛氏:米軍基地内保険代理店という独自性。外部研修内容の社内発表でスタッフの主体瀬を育成中。
山領氏:社内昇格による事業継承を進めている。4年後、自身が70歳になる時点で代表を退き、後継者へ社長を継承する予定である。現在は、後継者が無理なく株式を取得できるよう、後継者名義で銀行に資金を積み立てている。また、対外的にも機会があるごとに次期後継者であることを伝えている段階である。
立石氏:自身の代で廃業する考えである。仮に後継者がいるとすれば、不動産取引は小さなミスも許されない仕事であり、顧客が商談を録音する時代でもあるため、取引上の”穴”を生まない準備と慎重な対応の重要性を伝える必要がある。
江頭氏:セブンイレブンを2店舗経営しており、次女と四女にそれぞれ店舗を引き継ぐ考えである。本人たちもその方向性は理解していると思われる。現在は自身が人事管理を担っているが、その調整が難しく、後継者に習得してもらう上での大きな課題である。また、駅前店は旅行者やJR利用者向けの商品構成、万津店はクルーズ船入港時のインバウンド需要が見込めるなど、各店舗の立地特性を活かした強みがある。外国人従業員を多く雇用している点も、インバウンド対応上のメリットとなっている。
堤氏:家具業界において、ニトリやナフコなど大手との競争環境にある。九州内の家具店グループで大手に対抗しており、そのグループ内から見込んだ人物を店長として招き、後継者に指名している。現在、自身は店舗の売上や売り出しには口を出さず、資金繰りなど店長が担いにくい部分に注力している。代表者と後継者が同じステージで仕事をすると衝突が起きやすいため、それぞれが異なる役割を担うことが、円滑な承継につながると考えている。
浦崎氏:妻と2人で合同会社を経営している。現時点では事業継承について具体的には考えていなかったが、今後は、演奏会を核とした事業に加え、演出・音響・照明などのノウハウをどのように引き継ぐかを考える必要がある。
片桐氏:すでに事業継承を完了している。計量器部門は次男へ、産業廃棄物部門は長男へ継承済みである。自身は新たな事業に取り組んでおり、それぞれが責任を持って事業を運営していることから、継承は良好に進んだと判断している。

グループディスカッションA班。

グループディスカッションB班。
討論を通じて、各社の業種や事業承継の段階には違いがあるものの、いくつかの共通認識が見えてきました。まず、事業承継には約10年を要するとされ、早期からの準備が不可欠であるという点である。特に後継者の経営経験不足は多くの企業に共通する課題であり、学びを実践に結び付けるアウトプットの機会や、経営計画書の作成、意思決定の経験を積ませることが重要であると認識されていて、
また、承継においては業務上の専門知識や技術だけではなく、人間力や人間性を高める教育が大切であり、社員教育や後継者育成の基盤になるという意見が多く挙げられました。さらに、承継とは単に代表者を交代することではなく、会社が築いてきた信用、顧客との関係、現場の判断力、社風、さらには数字には表れない経営理念や創業者の「らしさ」をどのように次世代へ引き継ぐかが重要な課題であることが共有されました。
加えて、小規模企業では経営者に判断・営業・資金繰り・人事管理・顧客対応などが集中しやすいため、ワンマン経営から脱却し、社長依存の業務を見える化して仕組化することが必要であり、それによって第三者への譲渡も可能な企業体制につながるという認識も示されました。
さらに、後継者との関係では、現経営者がすべてに口を出し続けるのではなく、任せる部分と支える部分を分けながら成長を促すことの重要性も印象的であり、そして、現時点で具体的に承継を考えていない企業であっても、自社のノウハウや顧客基盤、会社の強みを整理しておくことは、将来的に事業承継、M&A、廃業のいずれを選択する場合にも必要であると確認ができました。
■ 夕食後、各部屋でまとめ討論および懇親会 ■
夕食を挟み各部屋に分かれて第一部討論の振り返りを行い発表用のまとめを実施しその後、全員が一部屋に集まり懇親会を開催。和気あいあいとした雰囲気の中、各社の本音や個別事情にまで踏み込んだ率直な意見交換ができ、参加者間の信頼関係を一層深める貴重な機会となりました。

■ 2日目 朝食後 グループ発表 ■
・「引き継ぎたいもの」
利益・信用などの金銭的価値だけではなく、技術・ノウハウ・人間性等の無形資産の承継が重要である。その根幹は「会社・経営者への信頼」である。
・「承継の弊害と人材育成」「明日からできること」
最大の課題は人材の確保・育成。従業員段階から経営者視点を持つ教育が必要であり、残従業員とビジョンを共有し、ベクトルを合わせる取組を明日から始めることが推奨された。

翌朝、発表する立石委員長。

発表を聞くLD道場参加メンバー。
■ 総評 ■
今回の討論では、各社の事業承継の状況はさまざまであったが、共通して見えてきたのは、承継とは人・信用・仕組み・想いを次につなぐことであるという点であり、後継者がいる会社、承継を終えた会社、廃業を考える会社、まだ何も考えていない会社など立場は異なるものの、今のうちから自社の強みや課題を整理しておくことが未来への備えになると感じました。
特に、信用・信頼・人間関係といった「時間をかけなければ築けないもの」にこそ大きな価値があり、AIなどで仕事のやり方が変化しても、その本質は変わらないという総括が印象的でした。また、引き継ぐ側も「ゼロより有利」という環境を当たり前とせず、覚悟を持って向き合う必要があり、「時間はかかる」からこそ逆算して早くから行動を始めることの重要性が示され、事業承継は、いつか突然始めるものではなく、日々の経営の中で少しずつ準備していくものだということを、今回の討論を通じて改めて確認する機会となりました。

1日目の参加メンバー。(撮影は森下会員)

ホテル宿泊、2日目までの完走メンバー。(撮影は中村繁会員)